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2015年アセアン・トレンドランキング ~インドネシア編~

インドネシア
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TNCアジアトレンドラボでは、年の瀬を迎えるにあたり、また12月31日にアセアン経済共同体(AEC)の発足を控える中、アセアン経済の中心を担う、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアの6ヵ国のトレンド調査を実施。各国で共通して流行したような事例や、他の国にはないその国ならではの事例が上がってきました。それではまずはインドネシアのトレンドランキングを一挙ご紹介します。

 

 

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渋滞を気にせずショッピング、ECサイト利用者急増

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数年前より浸透してきた「オンラインショッピング」だが、2015年に入って、何もかもがオンラインで購入できるというほどサイトが増え、利用者が急増している。それも、パソコンを開く必要がなく、スマートフォンからアプリを開いて買い物ができるためとても手軽。代表的なオンラインショップはLAZADA、ZAROLA、Blibli.com、Elevenia、OLXなど。2015年8月には、80,000件を超えるオンラインショッピングサイトへのアクセスがあった(出典:TECH IN ASIA)。大きな企業だけではなく、個人の趣味のものをオンラインで販売したり、中古のものをオンラインで譲ったりするサイトも出てきている。

トレンドの背景

ジャカルタの交通渋滞は深刻である。さらにどこに何が売っているかという情報が得られにくい。買えるか買えないかわからないものを渋滞の中、探し求めるのは難しい。また、昨今のジャカルタ市内の不動産高騰もオンラインショッピングが浸透している一因。売り手側は実店舗を持つ必要がなく、買い手側は自宅で待っていれば良い。スマートフォンやタブレットが生活に密着しており、今後オンラインショッピングが暮らしに欠かせない存在になっていくと考えられる。

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デリバリーから家事代行まで、瞬く間に浸透したGOJEK

 
ジャカルタでの交通手段のひとつであるバイクタクシー「OJEK」の配車アプリが「GOJEK」である。「GOJEK」はスマートフォン上でアプリを立ち上げると、最寄りのOJEKの位置がGPSで確認できる。目的地までの距離で価格が決められるため値段交渉の必要もない。乗車時に必要なヘルメットも用意されており、さらにヘルメットの中に被るシャワーキャップも用意されているため衛生的にも安心。またGOJEKは荷物の宅配や100万ルピア(約8,600円)以下の買い物まで引き受けてくれ、食べ物のデリバリーも請け負っている。また最近では掃除やマッサージなども注文できるようになった。。類似アプリの「GRAB BIKE」や、登録運転手が女性のみという「LADYJEK」なども出てきている。1日4,000件ほどの注文を引き受けているという。

トレンドの背景

渋滞のクルマの間を縫うように走るバイクタクシーは、時短移動に欠かせない交通手段。しかし、既存の「OJEK」だと、どこにいるのか定かではない上に、まず行先を告げ値段交渉をする必要がある。また、運転手とトラブルになることもあった。登録制のこの「GOJEK」は安全面においても信頼のおける、市民のかゆいところに手の届く交通手段として誕生した。
特に宅配などは、通常の宅配サービスだといつ届くか定かではない上に決して安くはないため、市内であればその日のうちに手から手へ届けてくれるこのGOJEKのサービスは、大きいものも届けられるように進化を続けている。

エコブーム到来、分別ゴミ箱・エコバッグに関心高まる

 
2014年頃より、ジャカルタ市内のゴミ箱設置がジャカルタ市の取り組みとして行われた。現在は道路脇にかなりの数の分別ゴミ箱が見られる。以前はゴミ箱があってもそこに捨てていなかったが、今は分別しなくともゴミ箱に捨てる意識が出てきている。また、「ゴミ銀行」というものがあり、そこでは古紙の回収やプラスティックゴミの回収をしつつ環境保全運動を行っており、そうした行政や企業主導の取り組みから、ようやく市民レベルまでエコ意識が浸透してきたのが2015年といえる。エコバッグの販売も以前より増し、プラスチックゴミからのエコバッグ作成・販売もさまざまな場所で見られるようになった。

トレンドの背景

インドネシアにおけるゴミ問題は深刻であり、特に人口の密集するジャカルタにおいては生活に支障をきたすほどになっている。陸だけではなく川へのゴミ投棄なども問題になっている。ゴミを「要らないもの」ではなく、「使えるもの」「資源になるもの」との考え方を浸透させるべく政府が動き始め、大量のゴミ箱設置やエコバッグの販売によるプラスチックバッグの削減、エコバッグ自体もリサイクルで作成するなど、民間団体やNPO団体も手伝って国民のゴミ問題への意識が高まってきている。

“他にはない”オリジナリティ溢れる「ポップアップ・フードコート」

 
ジャカルタの若者を中心に話題になっているのが、個性的なフードコート。モール内にあるような現存の食べ物を販売する形態ではなく、オリジナリティある食べ物を販売する人たちが集まった「ポップアップ・フードコート」。ゴマを練りこんだ黒いパンのホットドッグや綿菓子の乗ったドリンクなど、アーティスティックな食べ物が並ぶ。パサール・サンタから生まれたこうした新しい飲食店のいくつかが、ブロックMに新しくできた「Food Fighters」に移り、新たな店舗も加わり、若者たちのハングアウトの場所として賑わっている。また、移動販売式のフードトラック(実際はほとんど移動しない)も2014年頃より増え始め、何台かが集まり、フードコートのようになっている。

トレンドの背景

このトレンドをつくったのは副業もしくは趣味で店舗を始めた個人事業者たち。パサール・サンタの賃料が安かったため、クリエイティブな若者が次々に出店し、週末の若者のコミュニティスペースとなってトレンドスポットとなった。娯楽の少ないジャカルタにおいて、こうしたパサール・サンタや「Food Fighters」はモールとは違う独特の雰囲気とオリジナリティのあるもので溢れ、エンターテインメントスペースの要素も兼ねている。

斬新なリバイバルを遂げた、伝統フード「マルタバ」

 
古くからソウルフードとして親しまれている「マルタバ」。専用の大きな鉄板で職人が焼き上げるもので、通常は甘いものか塩気のあるものかの2種類でトッピングもあまり選ぶことができない。2015年にトレンドとなったのは、フュージョンされたマルタバ。甘いものはキットカットの抹茶味や人気のチョコスプレッド「Ovomaltine」をトッピング、塩気のあるものはツナ缶やコンビーフを鶏のひき肉の代わりに使用し、味もカレーやチーズ味など若者向けにアレンジされている。もともと夕方から売り出すマルタバは、友達や家族と一緒に食べる間食であったが、このフュージョンマルタバは2~3時間待つほどの人気を博した。

トレンドの背景

庶民の味として長い間親しまれてきたマルタバだが、もともと他の屋台フードに比べると少々値段が高いため、贅沢なイメージのあるソウルフードだった。必然的によく食べるのは中間層より上の階層の人たちであり、彼らのニーズに応えるべくフュージョンしたと言えるだろう。
大人数で賑やかに食べるからこそ、話題性のあるこのマルタバが瞬く間に広まっていった。
新しくできたコンテナを利用した写真の店舗は、屋台というよりも、飲食コーナーを備えた屋外カフェのような趣で、人目をひく「おしゃれな食べ物」として見事にリバイバルを遂げている。


■中間層まで浸透したスマホから生まれるサービス

No1と2にランクインしたのはスマホを利用したサービス。急速に浸透したスマホは、パソコンを所持しない中間層も利用し生活必需品になった。このスマホを使用してオンラインショッピングや、「GOJEK」でデリバリーや家事代行サービスを利用すれば、渋滞する街に買い物に行く必要がなく、自分の時間を有効に活用できる。インドネシアの生活事情にマッチしたスマホサービスがインドネシア人の生活を変えつつある。

■エコブームは一過性でなく、これから地方伝播

また、エコブームに関しては2016年は一層拡大をすると考えられる。現在はジャカルタの感度の高い層を中心にエコ意識が芽生えてきているが、今後は地方都市にもこうした動きが広がっていくと思われる。

2016年は伝統回帰ブームの予感

後半にランクインした、伝統フードの見直しの動きは、近年のベーカリーブームやカフェブームを一巡した後の伝統回帰の動きであり、食べ親しんだ伝統食を現代版にアレンジする新しい感覚を持った若者が、今後どのようなトレンドを生み出すか楽しみである。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2016年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。

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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2015年11月

調査対象者:ジャカルタに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


■問い合わせ先

株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

TEL:03-6280-7193 FAX:03-6280-7194

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