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2015年アセアン・トレンドランキング ~シンガポール編~

シンガポール
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世界中の企業が集まる都市国家・シンガポールは、アジア経済の中心地であり、最先端の技術やサスティナビリティを追求した植物園「Gardens by the Bay」や、国際バカロレアを採用した学校が数多い、環境&教育先進国でもあります。琵琶湖と同じくらいの小さな国土ながら、中華系を中心に、インド系、マレー系、外国人労働者などのさまざまな文化が交わり独自の発展を遂げる、シンガポールのトレンドランキングを紹介します。

 

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建国50周年「SG50」のイベントや施策に国中が熱狂

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建国50周年(SG50)にあたる2015年は、3月に建国の父・リークアンユー氏が亡くなったことも重なり、シンガポールにとって節目の年となった。8月9日のナショナルデーパレードに向け、街にはSG50の看板やロゴが溢れた。また、イベントやプロモーションだけでなく、シンガポール国民、外国人労働者に関わらず、2015年支払い分の個人所得税50%オフや、2015年に生まれた新生児に記念メダルやブランケット、子ども服などの8つの神器が贈られるなど、国を挙げて50周年の祝賀ムードが続いた。

トレンドの背景

今年はシンガポールにとって、ドラマチックな年になった。小さい島国ながらも建国以来、アジア、そして世界の経済や教育などをリードする国として成長を続けてきた。そして、外国人労働者や居住者も多いシンガポールでは、自国民だけではなく、外国人にも恩恵のある施策を行い、話題となった。このような税金や新生児への特典などで、政府への満足度も高めるなど、政府はさまざまな施策を打ち出し、国を挙げて盛り上がった。

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風水に基づいて計画されたグーリンビル

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金融・多国籍企業が連なるビジネス街「ラッフルズプレイス地区」に緑が外壁から生えているような外観のCapita Greenというオフィスビルが登場。これまでも、居住ビルやホテルなどの外観に植物をふんだんに取り入れた建築があったが、オフィスビルとしてこのような取り組みはこれまでなかった。Capita Greenは、シンガポール経済の中心地にあり、市民の目を引く象徴的な存在になっている。

トレンドの背景

シンガポールは歴史的に、新たな建物を計画する際、風水学に基づいたデザインを取り入れることが多い。建物のデザインでおおよそ、どの年代に建てられたものであるかも見分けることができるほど、その年の風水的に良いものとされる要素を取り入れる。Suntec cityやFar east squareは風水を取り入れた代表的な建築物で、幸運を呼ぶ込むために噴水を敷地の中心に設置、風の流れを良くするためにビルの上部を削る、各方位に水、火、土、風、金の要素を設置して、訪れる人に幸運を授けるような風水に基づいた構造になっている。Capita Greenのような緑を取り入れる建物が増加している背景には、緑や植物が近年の風水の流行アイテムとなっていることが一因と考えられる。

日本食が持ち帰りの“中食”としても浸透

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日本食はレストランで外食するものとして、既に広く認識されていたが、日本の食を紹介するフリーペーパーなどで、日本の食文化を「ウマミ」や「ダシ」レベルから紹介したことで、ローカルの人々に、「料理」から「食の素材」まで興味を持たせることに成功。持ち帰りの惣菜、中食としても受け入れられるようになりつつある。伊勢丹や明治屋などの日系の百貨店やスーパーマーケットは大盛況となった。また、9月には日本食総合センターとして、EMPORIUM SHOKUHINがショッピングセンター「マリーナ・スクエア」にオープン。ラーメンや寿司をはじめとする日本食レストランや、惣菜デリ、日本食材を取りそろえたスーパーマーケットが集まり、休みにはローカルの家族連れが数多く訪れる。

トレンドの背景

日本食はこれまで、友人などと集まり、ハレの日や集まりで食べる、少し敷居の高い食事というイメージを持たれていた。しかし、近年の日本の企業や自治体による日本食プロモーションや、共働き家庭が多いローカルの人々が、家に持って帰って食べる惣菜として日常的に日本食を食べるようになってきている。休日に家族で日系スーパーに足を運び、刺身や惣菜などを物色する光景が増えてきている。

サービス開始1年で急激に利用者を増やすUber

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Uberはアメリカから広まった、車のオーナーとハイヤーサービスを求める人をアプリでつなげるサービスで、シンガポールでは2014年9月からサービスを開始。2014年以前より、シンガポールには、GrabTaxiComfortDelGro Taxi Bookingなどの配車アプリがあったが、タクシー会社と提携しているため、ピークアワーなどは通常の料金から25%アップ、深夜になると50%アップなど、追加料金が発生していた。一方、Uberは個人の車を利用しているため、料金は一括提示、登録してあるクレジットカードで支払える手軽さが支持されている。サービス開始から1年弱で、既存の配車アプリに劣らないビジネスとして浸透した。

トレンドの背景

シンガポールで自家用車を購入する場合には、高額な所有権も同時に購入する必要があるため、自家用車を所有するよりも安価なタクシーを利用することが一般的。ピークアワーにはなかなか予約が取れないタクシーサービスの代替解決策の1つとしてUberは爆発的にユーザーを拡大した。クレジットカードが一般化しているシンガポールでは、Uberのサービスを利用する度に前もって登録してあるクレジットカードからの引き落としで済むという手軽さも受けている。

猫カフェ&猫博物館オープンで拡がる猫ブーム

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シンガポール北部のニースーンにあるHDBでは、コミュニティレベルで猫と飼い主の絆を高める「ラブ・キャット・プログラム」という政策なども行われている。2014年、日本からの猫カフェブームが到来、さらに今年1月には猫の博物館「The Cat Museum」がシティエリアにオープン。猫の歴史や里親募集、猫グッズ販売などを行っている。ライブ演奏が楽しめる猫カフェや、動物愛護機関SPCAの注目の高まりや、野良猫の去勢手術の助成金制度など、猫に優しい環境づくりが進んでいる。

トレンドの背景

シンガポール=ライオンの都という意味で、古くから猫は大切にされており、街中に至る所で猫を見かける。しかし、ペットとしては猫よりも犬を飼うことの方が多かった。現在でもペットショップでは、犬の取り扱いが多く、ペットとしては犬が主流であると考えられるが、地域として猫を保護する慣習や、博物館や猫カフェの増加などにより、猫をペットとして飼う人も増えていくと考えられる。


 

 

■都市国家・多民族だからこそ生まれるトレンド

2015年初頭から、SG50に向けて政府・民間を問わず税制優遇やセールなど、さまざまなキャンペーンを行い、中華系・インド系・マレー系など民族を問わず、国民は“シンガポール人”としてのアイデンティティをより意識し、国中が湧いた。また、都市国家であるシンガポールは国土面積が狭く、地下鉄やバスと同様にタクシーが市民の足としてよく利用されている。渋滞緩和のため、自家用車所有のハードルが高い背景もあり、タクシー利用の機会が多いシンガポールにおいて、運賃が安く、クレジットカードで支払いができるUberは広く受け入れられる土壌があった。風水に基づくビル計画も、コンパクトな都市国家だからこそ進めやすいと考えられる。

■アセアンNo1の先進事例が現われる場所

シンガポール人の教育水準は総じて高く、今回ランクインしたSG50の新生児への特典、グリーンビルや猫ブームなど、育児や環境、動物愛護などへの意識の高さへと繋がっている。政府主導の郊外HDBに住む若い夫婦のための大規模保育施設や、サスティナビリティを追求する植物園、3年連続で世界一利用しやすい空港に選出されたチャンギ空港(出典:SKYTRAX)を有するなど、先進事例が数多く存在するシンガポール。新商品・サービス、インバウンド、アウトバウンドを考えるにあたり、同国から生まれるトレンドはアセアンを理解する上で注視していく必要がある。

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2016年も引き続きウォッチしてまいります。トレンドランキングの総括もどうぞお楽しみに。
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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2015年11月

調査対象者:シンガポールに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


■問い合わせ先

株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

TEL:03-6280-7193 FAX:03-6280-7194

お問い合わせフォーム:https://www.tnc-trend.jp/about/#contact