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2016年アセアン・トレンドランキング ~フィリピン編~

フィリピン
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6年ぶりに大統領選挙が行われ、過激な発言で話題になった元ダバオ市長のドゥテルテ氏が圧勝。習近平国家主席、オバマ大統領、安倍首相との会談など、外交でも注目を集めました。新たな教育制度「K-12」もスタートし、多くの変化が起こる予兆を感じる1年となった、フィリピンの2016年のトレンドランキングを紹介します。

 

 

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国民が熱狂した大統領選&ドゥテルテグッズ

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2016年5月、6年ぶりにフィリピン大統領選挙が行われた。元ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏が、マニラ市長のビナイ氏、政治家の娘・ポー女史、前大統領アキノ氏の右腕・ロハス氏などを抑えて当選。選挙の状況は連日、新聞やFacebookなどで取り上げられ、賑わいを見せていた。さらに選挙関連の商品やサービスも登場。セブンイレブンでは、店内で販売しているドリンクのカップに各候補者を印刷し、人気投票を行うキャンペーンを展開。ドゥテルテ氏を応援する団体は、ドゥテルテ氏のTシャツを1枚300ペソ(約690円)で販売する他、無地のTシャツにプリントするサービスも話題となった。

トレンドの背景

フィリピンの大統領選挙は直接投票によって選出されるため、国民にとって身近なもの。選挙前のFacebookの投稿では、支援者集会や支持表明など、多くの書き込みがあった。危険なエリアとされていたダバオ市の治安回復に寄与した功績と、国民が辟易していた汚職政治をクリーンな政治に変えてくれるという期待から、ドゥテルテ氏が支持された。また、選挙中に人気となった「DU30」のロゴ入りグッズは選挙が終わった2016年12月現在でも販売されている。この「30」はフィリピン人が「Thirty(=30)」を発音すると「サルティ」に聞こえるということからきた「DU30=ドゥテルテ」と読めるという。

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不動の人気「Jollibee」、創設者が日本進出を公言

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フィリピン人がマクドナルドよりも愛するファストフードチェーン「Jollibee」。 2016年は「ハンバーク&マッシュルームグレービーソース&ライス」というフィリピン人が大好きな要素を組み合わせた「Burger Steak」を発売。50ペソ(約120円)と手頃な価格で、多くの人がこのメニューを食べている光景を目にした。また、期間限定メニューのハロハロにソフトクリームをトッピングした「Halo Halo Soft」、パンケーキで目玉焼きとベーコンをサンドした朝食メニュー「Pancake Sandwich」など、新メニューを投入。ドゥテルテ大統領が訪日の際にJollibee創立者のトニー・タン・カクチョン氏が同行し、日本での展開を公言し、多くの在日フィリピン人が喜んだ。

トレンドの背景

アメリカ、中国、香港などグローバル展開を行う「Jollibee」。2018年にはついに日本に1号店がオープンするという話も挙がっている。「Jollibee」のメニューはフィリピン人の主食であるライスメニューの豊富さと、甘いスパゲッティの他、「パンシットパラボック」という春雨にオレンジのあんかけがかかったフィリピンの伝統的麺料理など、フィリピン人の味覚にマッチしたメニューを次々発売し、その人気は不動のものとなっている。

新教育制度「K-12」元年

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2016年から新たな教育制度「K-12」が開始されることになった。「K」は「kindergarten(幼稚園)」を意味し、その後6年間の小学校、4年間のジュニアハイスクールに、この度、2年間のシニアハイスクールが加わった。これにより、本来であれば卒業していた学生が2年間追加で教育を受けることとなった。この教育改革によって、現在フィリピンでは、教師や教室の不足や学費の増加による負担などさまざまな問題が噴出してきている。

トレンドの背景

フィリピンでは、小学校、ジュニアハイスクールに通い、卒業後は兄弟や家族を養うために働く人が多い。これまで教育水準の高い中間層以上の学生が海外の大学に留学する際に、10年間の教育年数では入学の条件を満たせないなどの問題があり、国際的な基準である12年制度に合わせることとなった。さまざまな問題が出てきているが、長期的に見れば全体の教育水準が上がることになるため、世界各国からは「K-12」の導入が注目されている。

2016年・新たに支持を得た日本食「お好み焼き」

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「ラーメン」、2015年のランキングでもピックアップした「トンカツ」など、日本食ブームが続くフィリピンで、2016年は「お好み焼き」が支持されている。2015年11月にオープンし、4店舗まで拡大した「道頓堀」や、2016年6月に高級ホテル「Conrad Manila」内にオープンした「千房」、2016年7月に「ぼてぢゅう」がオープンし、連日賑わいを見せている。「道頓堀」のお好み焼きは250~350ペソ(約575~690円)と外食としてはそれほど高額ではないため、気軽に利用されている。また、お好み焼き以外にもヤキソバ、焼肉、丼、ラーメンなど、メニューが豊富で、それぞれが食べたいものを食べる、家族や仲間とシェアできるなどの理由から人気になっている。

トレンドの背景

日本への観光ビザの入手がしやすくなったこと、円安などの影響から日本への訪日旅行者が増加し、これまで以上に日本や日本食の認知度が広まり、受け入れられやすい。また、シズリングプレート(焼いた鉄板皿)で提供される「シズリング・シシグ」(豚)や「シズリング・ガンバス」(海老)など、もともとあるフィリピン料理に近い食べ物としてお好み焼きが定着したとも考えられる。「道頓堀」では、自分で焼いて食べるか、店員につくってもらうかを選ぶことができ、エンターテインメント性もフィリピン人の若者を中心に受け入れられている。

都会疲れからハイキング&トレッキングに注目

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生活に余裕が出てきた中間層以上の若者を中心に週末など、余暇の過ごし方が変化してきている。これまではショッピングモールへ行き、1日をショッピングやレストランで美味しいものを食べるなどして、楽しんでいる人が多かった。しかし、最近ではマニラから2~3時間ほど離れた郊外へ行き、ハイキングやトレッキングなどのアクティビティに興じる人が増えている。マニラから車で3時間ほどのバタンガス州にあるマキリン山では、万病を治すと言われている湧き水があり、人気スポットになっている。ハイキングに出かける場合、午前5時頃にマニラを出発し、8時頃に目的地に到着、午前中にアクティビティを楽しみ、渋滞が始まる夕方前に帰ってくることが多い。

トレンドの背景

マニラは渋滞が深刻で、都市部のモールに出かけ、ショッピングをすることを億劫に感じる人も少なくない。都会の喧騒から離れ、自然を満喫することが若者にとって癒しであり、トレンドになっている。また、健康志向者も徐々に増えており、身体を動かすアクティビティに注目が集まっている。雄大な自然の中で写真を撮り、InstagramなどのSNSにアップすることも人気となっている。


 

 

■新大統領&新教育制度によりもたらされる変化

圧倒的得票数で当選したドゥテルテ大統領。麻薬売人の排除など、強硬な姿勢で改革を進めるドゥテルテ政権によってフィリピンには大きな変化が訪れそうだ。新教育制度「K-12」は、これまでの10年の教育から2年就学期間が伸びるというもの。現在は教師や教室が不足するなどの問題も多いが、高等教育によってフィリピンの教育水準は高まることが予想される。

■新たな食を受け入れやすい国民性

豚肉、牛肉を食べてはいけない、アルコールを飲んではいけないといった、宗教や習慣による食の制限がないため、食に関するトレンドが生まれやすいフィリピン。ラーメン、トンカツに続き、お好み焼きが支持されるなど、日本食ブームは2017年も継続しそうだ。また、欧米の飲食店も積極的に進出している。

■中間層以上の国民に根づき始めた健康意識

深刻な渋滞により「都会疲れ」を感じる若者が増え、ハイキングやトレッキングなど、自然の中で行うアクティビティが2016年は人気となった。所得の増加で生活に余裕が出て、健康に気を遣う人も増えている。エクササイズやスポーツ、アウトドアに関する新たなサービスや商品への需要は、今後ますます高まりを見せるであろう。

 

TNCアジアトレンドラボでは、こうした動きを2017年も引き続きウォッチしてまいります。他国のトレンドランキングの更新もどうぞお楽しみに。

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■調査概要調査方法:TNCアジアトレンドラボ、現地ボードメンバーを中心としたグループインタビュー、およびライフスタイル・リサーチャーによる定性調査

調査時期:2016年11月

調査対象者:マニラに5年以上居住する男女、かつアッパーミドル以上の生活者、10代後半~20代前半の、トレンドに敏感な層

調査実施機関:株式会社TNC(http://www.tenace.co.jp/)および海外協力会社


■株式会社TNC

各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住500人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社です。現地に精通した日本人女性が、その国に長く暮らさないとわからない文化や、数字に潜む意味をひもとき、日本人が未だ知らない斬新なモノやコトを探すインバウンズ、日本企業が進出する際のベースとなるリサーチ・アウトバウンズや、現地の人たちの暮らしぶりや生活習慣のレポートから、海外におけるヒント探し、市場レポートなど幅広く対応します。また、レポートに基づいた視察のアテンドも行っております。


■問い合わせ先

株式会社TNC TNCアジアトレンドラボ編集部 木下・濱野

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